#author("2018-06-05T12:14:45+00:00","default:smo","smo")
[[強震観測の実際]]

強震計(地震観測装置)には時計が内蔵されている。時計の役割は2つある。一つは、ペースメーカーとして観測データのサンプリング間隔を保つこと。もう一つは、観測データに時刻情報を与え、他の地震計の記録と対比できるようにすることである。
 振動特性(例えば卓越周期)の把握を目的とした単点観測や、ケーブルを引き回して複数地点の観測を同一収録装置で観測する場合には、収録装置の時計の時刻ずれは問題とはならない。しかし、複数の収録装置を用いてアレイ観測を行う場合は、時刻精度は重要な問題である。時刻ずれがある場合、複数の収録装置で観測された地震記録の対比が困難となり、振幅の空間変化、波動の伝播速度などについて間違った情報を導く原因となる。そのため、強震計には時刻精度を保つための時刻校正装置が備わっている。
 近年の強震計では、GPS信号の時刻情報を取り出し、それを基に強震計内の時計を校正するタイプが主流である。GPS衛星の時刻情報は、原子時計に基づいており、非常に精度が高いと考えられる。ただし、使われているGPS受信機によっては、長期間の観測に伴いGPS衛星の時刻システムに起因する時刻のロールオーバー(*1)に悩まされる場合もある。また、衛星電波の受信が必須のため空の開けた建物外部にアンテナを出す必要があることに留意する必要がある。
 GPSによる時刻校正が普及する前は、ラジオの時報情報を用いて時計を校正するシステムが標準であった。これは、時報で0秒に時刻を合わせるシステムのため、時計が30秒以上大きくずれると合わせきれず、人の手で補正する必要があった。なお、ラジオの受信状態をよくするには外部にアンテナを張る必要があるが、ラジオ放送自体がGPSの電波に比べて長波長の電波を用いているため屋内でも受信可能の場合が多い。なお、最近は、電波時計と同様に標準電波JJY(*2)を受信して時刻校正するタイプもあるが、普及していないようである。
 また、最近の強震観測装置はIPネットワークに接続されるケースが多くなっている。IPネットワークが使える場合には、ネットワーク経由でNTPサーバー(*3)から時刻情報を入手して時刻校正を行うものもある。
以  上


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