*建物の強震観測 [#y7b7f7ec]
**観測の特徴 [#m66eedde]
建物は強震観測の黎明期から、その最も重要な対象物であった。建物などの構造物の地震に因る損傷の過程や原因の究明が目的であったので、実際の建物の揺れを計測する必要があった。
震度計((震度を測定するための機器で、仕組みは加速度を記録する強震計そのものである。))やK-NETなどの地震動を計測する強震計と比較して、建物の強震観測ではいくつかの違い、特徴がある。
***測定点 [#b62931fb]
建物の地震時挙動を観測の目的とする場合、建物への入力地震動と建物の応答を同時に観測する必要がある。すなわち、少なくとも建物の基礎と、応答が大きくなるであろう建物の頂部の2点の動きを計測することになる。建物の規模や形状、特徴によってはさらに計測点(センサー)を追加することとなる。例えば、超高層建物では1次から高次に至る振動モードを把握するため中間階の動きも計測する場合が多い。地盤と建物の動的相互作用の影響を検討したい場合は、地盤上の測定点も必要となる。ねじれが生じる恐れがある建物では、ねじれを計測するため平面的に複数の測定点を配置したい。

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図1 センサー配置例
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CENTER:図1 センサー配置例

***センサー間同期 [#t234604b]
現在様々な種類の強震計が存在するが、水平2成分と上下1成分の計3成分の加速度計を内蔵して、独立して稼働するものも多い。建物の強震観測にこのタイプの強震計を用いる場合は、複数の強震計を同時に起動できる仕組み(連動)を考える必要がある。この場合強震計同士が通信できる必要があり、LANや信号線を用いる。それが難しい場合は、各々独立に機能させ、記録処理の段階で記録の同期を図る。各強震計の時計が正確であれば、それほど難しくはない。そうでない場合は、2つの記録の相互相関関数や位相差を見ながら時刻合わせを行う。複数のセンサーを接続できるタイプの強震計では、各観測点の記録の同時性は保証されているが、センサーと収録装置の間に専用ケーブルを敷設する必要があり、設置は大がかりとなる。

***強震計の性能 [#td903e28]
:振動数特性|対象とする建物の固有振動数を考慮して決めればよい。高振動数側はせいぜい 20 Hz までであろう。低振動数側は、通常 0.1 Hz (10秒)程度までカバーできていればいいであろう。ただし、観測対象建物の固有振動数が 0.2 Hz 以下(5秒以上)などと極めて低い場合、入力地震動の長周期地震動を検討したい場合などは、さらに低振動数(DC ~ 0.05 Hz)まで計測できる必要がある。
:分解能|必要とされる分解能は強震観測の目的に依存する。微動レベルから解析の対象としてモニタリング的な観測であれば、数ミリから数十ミリgalの分解能が必要であろう。一方、大きな地震時の記録が主なターゲットであれば、数百ミリgalの分解能でも足りる。長周期構造物では大きな変位が生じても加速度は小さくなるので、加速度を計測する強震計では、より高い分解能が求められる。

このように、対象建物や観測の目的によって、求められる強震計の性能は変わってくることも、建物の強震観測の特徴といえる。

***設置方位 [#k7d5cc0f]
建物の構造設計や耐震設計は、建物の長辺方向と短辺方向など、直交する2つの方向に対して行われる。強震計も水平動は直交する2つの方向を測定するので、その方向を設計で扱った方向に合わせたほうが後の解析上都合がよい。このため強震計、あるいはそのセンサーの設置方位は必ずしも、東西南北と一致しない((水平2成分が記録されていれば、方位変換は容易である。東西南北に合わせて設置しても問題がある訳ではないが、建物軸に合わせることが殆どである。))。

**観測事例 [#a41e85ad]
具体的な観測事例については、[[実例集>実例集]]を参照されたい。
RIGHT:(鹿嶋、佐々木)

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