*加速度と速度、変位(積分) [#b3a7627b]

強震観測では、測定点の(時間の関数として)加速度を計測することが多い。測定点の速度や変位が必要な場合は、加速度記録を時間で積分することになる。

**時間領域での積分 [#ncb43119]

時間$t$の速度$v(t)$は加速度$a(t)$から以下の式で求められる。

#tex(\begin{equation}v(t) = \int_{-\infty}^{t}a(\tau)d\tau \end{equation})

離散値で与えられる速度$v_i$は、$a_{i-1}$から$a_i$間の加速度が線形で変化すると仮定して(いわゆる台形公式)、以下で求めることができる。

#tex(\begin{equation} v_i = v_{i-1} + (a_{i-1} + a_i){\Delta}t/2 \end{equation})

実際には、この方法で積分すると、低振動数成分のノイズや誤差により、積分波形にドリフトが生じる。このため適切な基線補正を併用することになる。基線補正の方法としては、加速度記録の基線に直線、あるいは曲線を仮定して、最小二乗法などで求め、それを除去するのが一般的であろう。

**振動数領域での積分 [#f10e0b24]

フーリエ変換などによって、時間の関数である加速度を、振動数の関数に変換し、振動数領域で積分する方法も有力である。基本式は以下のようになる。
フーリエ解析については[[こちら>フーリエスペクトル解析]]

#tex(\begin{equation} V(\omega) = \frac{A(\omega)}{i\omega} \end{equation})

ここで、$A(\omega)$, $V(\omega)$は$a(t)$, $v(t)$のフーリエ変換、$\omega$は角振動数($=2\pi f$)、$i=\sqrt{-1}$

具体的には以下の手順となる。前式を見れば明らかなように、低振動数のノイズは振動数に反比例して拡大されるので、そのままでは積分後の波形に低振動数ノイズの影響によってドリフトが生じる。このため低振動数のノイズを、ローカットフィルターによって除去する必要がある。

+フーリエ変換 [$a(t) \to A(\omega)$]
+振動数領域での積分 [$V(\omega) = A(\omega)/i\omega$]
+ローカットフィルター処理 [$V'(\omega) = F_L(\omega) V(\omega)$], $F_L(\omega)$ はローカットフィルター
+フーリエ逆変換 [$V'(\omega) \to v(t)$]

地震動の最初から終わりまできれいに収録されている場合はいい結果が期待できるが、記録が途中から始まっている場合や途中で終わっている場合は、リンク効果に気を付ける必要がある。

**地震計のシミュレーション [#n225d011]

基本的な地震計は、振り子の動き(通常変位)を計測することで、地震動を記録する。振り子の固有周期(固有振動数)と減衰を調整することにより、加速度計、速度計、変位計が実現できる。振り子の変位$X$と地動加速度$\ddot{X}_g$、地動速度$\dot{X}_g$、地動変位$X_g$の関係は以下のようになる。

#tex(\begin{equation} \frac{X(\omega)}{\ddot{X}_g(\omega)} = \frac{1}{\omega_o^2 - \omega^2 + 2{\bf i}h{\omega_o}{\omega}} \end{equation})
#tex(\begin{equation} \frac{X(\omega)}{\ddot{X}_g(\omega)} = - \frac{1}{\omega_o^2 - \omega^2 + 2{\bf i}h{\omega_o}{\omega}} \end{equation})

#tex(\begin{equation} \frac{X(\omega)}{\dot{X}_g(\omega)} = \frac{{\bf i}{\omega}}{\omega_o^2 - \omega^2 + 2{\bf i}h{\omega_o}{\omega}} \end{equation})
#tex(\begin{equation} \frac{X(\omega)}{\dot{X}_g(\omega)} = - \frac{{\bf i}{\omega}}{\omega_o^2 - \omega^2 + 2{\bf i}h{\omega_o}{\omega}} \end{equation})

#tex(\begin{equation} \frac{X(\omega)}{X_g(\omega)} = \frac{\omega^2}{\omega_o^2 - \omega^2 + 2{\bf i}h{\omega_o}{\omega}} \end{equation})

ここで、$\omega_o$は振り子の固有角振動数、$h$は減衰定数。

各振動数特性は、下図のようになる。

&ref(tf_aag.png);&ref(tf_vag.png);&ref(tf_dag.png);

これらの振幅特性がフラットな部分を使うことになる。つまり必要な振動数領域がフラットになる固有振動数と減衰を設定して、振り子の応答変位を計算すればよい。

地震計の振り子の動きの計算は、線形1質点系の応答解析であり、時刻領域でも振動数領域でも容易である。ただし、上記振動数特性に表れているように、位相にずれが生じることに留意する必要があるが、位相のずれと振動数が線形関係にあれば、波形の形自体は変わらない。

** 各方法の比較 [#zc7ab18f]

&ref(integrated_waves.png);

** 参考文献 [#y3c695b3]
+大崎順彦: 新・地震動のスペクトル解析入門, 鹿島出版, 1994年
+Nigam N.C. and P. C. Jennings: Calculation of Response Spectra from Strong Motion Earthquake Records, BSSA Vol.59, No.2, 1964.4, pp.909-922

RIGHT:(鹿嶋)

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