*長期観測の取組み [#f9759003]

**神奈川大学による観測事例 [#i7f3ae0c]

-観測の目的・観測内容

(観測の目的・背景)
--神奈川大学建築学科では,2000年4月より2005年3月まで 「文部科学省学術フロンティア推進拠点」 としてのプロジェクト「地震・台風災害の制御・低減を目的とした制振・免振デバイスの開発ならびに損傷制御設計方に関する研究」と,「横浜市産学共同研究センター」を研究拠点とした産官学共同研究プロジェクト「建築物における地震・台風防 災に関する研究−制振・免振装置の評価・開発−」の2本の柱とした地震や台風の災害を制御・低減するプロジェクト(TEDCOMプロジェクト)を結成して進めている研究開発の一環として,実建築物の挙動観測が神奈川大学横浜キャンパス内で行われている。

(観測内容)

--対象建物:

   神奈川大学1号館(CFT造, 地下1階,地上8階,塔屋1階)

   神奈川大学23号館(RC造・基礎免震,地下2階,地上8階,塔屋2階)

--地震計:

   1号館: B1, 1, 3, 6, 8F(加速度計)		

   23号館: B2, B1, 3, 6, 8F(加速度計),免震層(変位計)

   地盤: GL-21.8, -1.5m(加速度計)

-公開されている情報・管理体制

(公開されている情報)

--名古屋大学・福和研究室で開設されている名古屋大学強震観測Webを参考にして構築されている神奈川大学強震観測Webにおいて,地震観測データと共に建物や地盤の情報が公開されている(図2)。

(管理体制)

--トリガ観測が行われており,設定したレベルを超えた揺れを感知すると全点のデータが1号館B1階に設置された収録装置に転送され記録される。また,学内LANを通して他棟の研究室においてモニターおよび収録が可能となっている。

--23号館B2階の水平最大加速度値が5gal以上を記録したデータのうち,観測後およそ1年を経過したものがWebで公開されている。

-観測記録の例

--神奈川大学強震観測Webでは,観測された地震の一覧が示されており,2001年4月10日10時3分に発生した千葉県南部の地震(Mj=4.6)から2011年4月21日22時37分に発生した千葉県東方沖の地震(Mj=6.0)まで,59地震の地震記録の波形図とデータが公開されている(2012年8月現在)。

--地震記録を用いて表層地盤の卓越周期,地盤と基礎の相互作用による入力損失効果,23号館の免震効果,建物固有周期について分析され,結果が報告されている(荏本・2002)。23号館については,シミュレーションにより設計モデルと観測記録との対応などについて検討した結果が報告されている(栗山・荏本,2002)。

--2011年東北地方太平洋沖地震については,免震層下の加速度と相対変位の波形図が公開されている(図3)(それ以外については,システムの点検中のため,記録がとれていない(島崎・2011))。

[参考文献]

+神奈川大学:TEDCOMプロジェクト(2000-2005),http://f0303176.yb12.kanagawa-u.ac.jp/TEDCOM/index.htm(2012年8月現在).
+島崎和司(2011): 免震構造物の2011/3/11東北地方太平洋沖地震の実測結果とシミュレーション,日本建築学会大会講演梗概集,B-2分冊,pp.631-632.
+荏本孝久(2002): 1号館・23号館の地震時実挙動観測,神奈川大学TEDCOMプロジェクト主催地震・台風災害の制御・低減に関するシンポジウム,-制震・免震構造と実挙動観測-, pp.53-62.
+栗山利男・荏本孝久(2002): 23号館の地震時実挙動観測に基づくシミュレーション,神奈川大学TEDCOMプロジェクト主催地震・台風災害の制御・低減に関するシンポジウム,-制震・免震構造と実挙動観測-, pp.63-68.

#ref(その他特徴的な建物/fig_KNGUNIV.jpg) 

**芝浦工大による観測事例 [#q1751f12]
-観測の目的・観測内容

(観測の目的)

--軟弱地盤上に建設された大規模免震構造物の挙動把握

(観測内容)

--対象建物 芝浦工業大学豊洲校舎(研究棟・教室棟・交流棟)

--地震計

  [加速度計]

---免震装置の上下(12台),地盤(校舎脇GL-1, 40m)(2006年4月1日観測開始)

---教室棟および研究棟(4階以上)(2010年3月観測開始)

  [変位計]

---けがき(4カ所)(2006年4月1日観測開始)

---デジタル式変位計(2010年3月観測開始)

-公開されている情報・管理体制

(公開されている情報)

--ホームページには,建物や観測システムに関する情報と,守衛小屋で震度2以上を観測した地震の一覧表などが公開されている(図2)。

--震度マップ速報として,各階を色分けした建物断面図によって震度の違いが分かるようになっている(図3)。

--波形のデジタル値は公開されていないが,震度や最大加速度などの地震動強さをまとめたファイルや校舎の震動アニメーションを地震の一覧表からダウンロードできるようになっている。

(管理体制)

--免震装置の上下と地盤に設置した加速度計は収録装置と接続され,収録装置にデータが保存される。その他の計測装置は学内LANに接続したネットワークセンターであり,内蔵メモリーに保存されたデータが定期的にサーバーにコピーされるようになっている。

--基礎に設置した地震計の1台は感度を10倍に上げて計測を行っている。

-観測記録の例
--2011年東北地方太平洋沖地震については,専用のページが設けられ,観測波形や震度分布の図(図3)や免震装置が動いた映像が確認できる。

[参考文献]

+芝浦工業大学地震防災研究室:芝浦工業大学豊洲校舎(免震構造)における地震観測(暫定版),http://www.eq.db.shibaura-it.ac.jp/Mensin/index.shtml(2012年8月現在).
+紺野克昭・西川貴文・藤野陽三・阿部雅人(2011):東北地方太平洋沖地震における芝浦工業大学豊洲キャンパスの地震観測記録,日本建築学会大会講演梗概集,B-2分冊,pp.325-326.

#ref(その他特徴的な建物/fig_SHIBAURAUNIV.jpg,90%) 

RIGHT:(境、神原)


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