地盤−杭(連壁)−建物系

 ウォータフロントの軟弱地盤に高層建物が建設されるようになり、長尺の杭や連壁を有する構造物が増えている。一方、強震時の地盤変位が杭基礎や連壁に及ぼす影響や、軟弱地盤の非線形性の影響など、地盤−杭−建物系の動的相互作用の解明すべき課題は多くあるが、地震観測事例は少なく、その実挙動は十分に把握されていない。

 地盤−杭−建物系の地震観測では、加速度計だけでなく、杭や連壁にひずみ計を設置して、変動軸力や曲げモーメントの分布を評価したり、液状化対象層に間隙水圧計を設置して水圧の経時変化を捉え、あるいは基礎底面や側面に土圧計を設置して土圧分布を測定するなど、様々な試みが行なわれている。

 ここでは、特徴的な地震観測の例を以下に2つ紹介する。

軟弱地盤上の杭支持構造物の観測例

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[参考文献]

  1. 清水勝美、田蔵隆、横田治彦、片岡俊一、佐武直紀:軟弱地盤に建設された高層の杭支持建物に対する地震観測、第25回土質工学研究発表会、pp.881-884、1990.

埋込み構造物の地震時土圧の観測例

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[参考文献]

  1. 広田昌憲、石村紀久雄、野嶋治、大宮幸男、鬼丸貞友:軟岩中に埋込まれた構造物に作用する土圧に関する研究 (その2)地震時土圧の観測概要と結果、日本建築学会大会学術講演梗概集、pp.1361-1362、1991
  2. 広田昌憲、石村紀久雄、杉本三千雄、阿部康彦、鬼丸貞友:軟岩中に埋込まれた構造物に作用する土圧に関する研究 (その3)地盤・建屋の相対変位挙動と地震時土圧、日本建築学会大会学術講演梗概集、pp.1363-1364、1991

地盤−杭−建物系の観測にあたっての留意点

上記で紹介した事例のように、地盤−杭−建物系の地震観測では、通常の加速度の他に、ひずみ計や間隙水圧計、土圧計などの設置が行なわれる場合がある。これらの計測計は、加速度計に比べて、i) 施工管理が要求される、ii) 耐久性に問題がある、iii) メンテナンスが困難、iv) 分析の手間、などの課題が挙げられる。

 特に、杭の鉄筋計では防湿処理などの養生を確実にすることや、間隙水圧計では設置孔のスライム処理、脱気処理、目詰まり対策などの埋設時の施工管理が重要であり、熟練した設置業者を選択することが肝心である。また、これらの計測計は設置後の交換は困難であることから、可能であればひずみゲージをあらかじめ余分に貼っておくことや、一部欠測した場合のデータ処理方法などを検討しておくことが望ましい。

 また、建物の施工段階による静的変化(施工段階による荷重変化や温度による日変化・季節変化など)も計測可能なので、静的な初期値からの変化量を記録するとともに、かつ地震時の動的挙動を測定する場合、レンジ設定やオートバランスを如何にするか、などに留意する必要がある。


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