地表の地震動と建物への入力地震動 †近年K-NET,KiK-net観測点において1000Galを超える地震動が観測されることが珍しくなくなってきた。記憶に新しいところでは,新潟県中越地震において約1300Galの地震動を観測した。しかし,この地震記録が観測された小千谷小学校(NIG009)では,旧耐震基準による設計法により建てられた校舎にも関わらず,大きな被害を発生することがなかった。この要因の一つとして地盤記録と建物内記録の乖離がいわれている。 建物と地震の関係は船と波の関係に例えて考えると分かりやすい。船の寸法が波の波長に対して短い場合,船は波の一様な動きに合わせて上下するが,船の寸法が長い場合は上下の波の動きが船の各部で異なるため相殺されて船全体に対する上下動の効果はほとんど消滅することになる2)。 建物基礎に対する入力のイメージを図1に示すが,建物と地震動の関係も同じであり,高振動数の地震動は基礎と地盤の間で相殺されて建物に伝わりにくくなる。小千谷小学校でもこれと同じような現象があったことが可能性の一つとして考えられる。 相互作用効果による入力損失に関しては,例えば安井等3)が兵庫県南部地震における地震観測記録から,地表面に対して建物基礎では,最大加速度は3割程度,最大速度は1割程度低減するという明快な結論を示しているように,近年公表されるようになってきた。 実際の観測結果による相互作用効果の例を示す。2階建ての免震建物における建物中央の耐圧盤上と建物から十分離れた位置の敷地北端部のGL-2m地盤の(図2)の比較である4)。図3に加速度応答スペクトルを示す。周期0.4秒をより長周期側では両者に差が見られないが,それより短周期側(図の○で囲んだ部分)では耐圧盤のスペクトル値は地盤より大きく低減しているのがわかる。 参考文献 †
(中川、上林)
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