強震観測とは

強震観測で測るもの

強震観測とは、強い地震動や激しい構造物の揺れを観測することであり、そのための観測機器を強震計と呼ぶ。強震観測という言葉は地震観測と区別するためにも用いられる。この場合、強震観測が対象とするのは、地震被害に結び付く振動現象であり、振動数範囲では0.1Hzから20Hz程度、振幅は加速度に換算して数G(Gは重力の加速度)に及ぶ。また、地震による地盤の揺れ(地震動)のみならず、それを受けて振動する建物などの構造物の挙動も重要な測定対象となる。

地盤や建物の揺れは、地盤や建物のある点の時間の進行に伴う移動量を計測する。初期の位置からの移動量を変位といい、時間の関数である。また、変位の単位時間当たりの変化を速度、速度の単位時間当たりの変化を加速度と呼ぶ。これら3つの量は時間を介して微分/積分の関係にあるので、どれか一つを計測すれば他は算出することができる。強震観測では加速度を計測することが多い。

地盤や建物の揺れは、立体的に生じる。これを計測するには直交する3方向の振動を計測する必要がある*1。このため、強震計の計測方向は、直交する水平2成分(X, Y)及び上下成分(Z)の3成分が基本となる。地盤を対象とした強震観測では、水平2成分は(北-南)及び(東-西)方向とされるが、建物を対象とした強震観測では、通常設置方位は建物軸に合わせるので、東西南北とは一致しない。

日本の強震観測の歴史

日本における強震観測は、1950年代に始まった。1948年に発生した福井地震で、建物や土木構造物が甚大な被害を受けたことが契機となって、1951年に日本独自の強震計の開発が始まった。1953年には1号機が完成してた。1950年代後半からは、全国の主要な都市で強震計の設置が進められた。それ以降、地盤や構造物を対象とした強震観測網は着実に広がり、多くの強震が蓄積されてきた。

強震記録が得られた最初の被害地震は、1964年新潟地震である。この地震による液状化で、新潟県営川岸町アパートでは、建物の傾斜や転倒などの被害が発生した。このアパート群のひとつに強震計が設置されており、そのアパートの中で見事に強震記録を得ることができた。

その後、1968年十勝沖地震や1978年宮城県沖地震などでも貴重な強震記録を採取しており、十勝沖地震の八戸港湾の強震記録や1978年宮城県沖地震の東北大学の記録は、建物の耐震設計にも用いられている。このように強震観測は、日本における地震工学や耐震工学において重要な役割を果たしている。

(鹿嶋)

*1 ある点の動きを考えれば、x, y, z方向の水平移動に加え、各軸周りの回転動も考えられ6自由度となるが、強震観測では通常回転動は計測しない

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Last-modified: 2013-05-02 (木) 09:20:03 (4011d)