はじめに

地震に強い建物を造るためには、地震によってもたらされる地震動と、地震動によって引き起こされる建物の揺れを正しく理解しなければならない。強震観測はこの重要な課題に取り組んでいる。

強震観測とは、地震時の地盤や建物の揺れを記録することである。特に建築の分野では、建物に損傷を与えるような強い地震動や、その地震動を受けた構造物の揺れを確実に測定することを目的としている。日本では1950年代にそのための計器、強震計の開発が始まり、強震観測の幕が上がった。

これまでに、地道ながらも着実な成果を積み重ねてきた分野であったが、1995年兵庫県南部地震を機に強震観測網が大幅に整備され、建築技術者であれば、K-NETや最大加速度などの言葉を聞く機会も多いであろう。日本建築学会の強震観測小委員会では、強震観測の推進のため、強震観測に関する知識や強震記録の利用方法をまとめた「強震観測の手引き」を作ろうと、2010年から準備を始めていた。

そんな状況で、2011年東北地方太平洋沖地震が発生した。この未曽有の災害をもたらした地震でも、強震観測は着実に役割を果たし、膨大な数の地震動の記録を採取し、かなりの数の建物の挙動を捉えた。強震観測の手引きの編集作業は遅れを余儀なくされたが、これまでに経験のなかった強震観測の効果や注意点も明らかになってきた。本手引きには、そのような経験も生かされている。

本手引きは、ウェブ編集の特質を生かし、どこで完成ということはなく、常に進化し続ける知識ベースを目指している。建築構造の技術者や研究者のみならず、すべての人に、地震とそれを受けて揺れる建物の挙動、そしてそれを明らかにするための取り組みに興味を持っていただければと願う。

  1. 手引きの目的
  2. 執筆者

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Last-modified: 2013-09-12 (木) 17:07:25 (3873d)